9.〈闇の神〉の獄舎 The Dark God's Prison


  〈黒檀の神〉への奉仕は贔屓目に考えても困難だ。神格の敵は至るところにいる。ましてや教団内にすら敵はいる。事態を悪化させることに、定命者の下僕は名状しがたき主の囁きを聞くことで、また短い奉仕期間のうちに見聞きする内容から、邪悪な主が世界に仕掛けようとしている計画を知ってしまい、しばしば狂気に陥る。〈闇の神〉は弱い下僕に対して寛容ではない事から、意志の弱い狂信者は奉仕中に破壊されてしまう。この部屋において、主を失望させた者がいかなる運命を辿るのかが明らかになる。
  この部屋には荒れ狂うタリズダンの下僕が投獄されている。教団はこれら欠陥者を獄舎に封じると、世話役の護衛としてサイアン・オヴ・マッドネスを残してここを離れた。
  PCが部屋のはずれに到達したなら、読め:

  回廊は広がると、煙と炎に満ちた、大きな部屋に至る。炎の中に、天井から鎖で吊られた、黒鉄製の檻が吊るされ、その脇に、狭い通路が差し渡されている。

 

  PCが部屋に入ったなら、彼女らは戦術的遭遇を引き起こす。


戦術的遭遇:遭遇レベル20

準備

  3体のサイアン・オヴ・マッドネスはマップ上に示された場所に配置される。火と煙が彼らを隠している。そのためPCが〈視認〉可能な場所に移動するまで実際に配置するのは待て。プレイヤーはマップ最下段に自らのミニチュアを配置しろ。しかし燃えているマスには置かないように注意しろ。キャラクターがエフィジーに隣接したマスに入ったなら、読め:

  天井から下げられた細い鉄の鎖の先には檻が吊られ、中には炎にあぶられ炭となった囚人が取り残されている。その口は開かれ、絶叫を上げた状態で凍りついている。囚人がまとっているのは、燃え残ったわずかな切れ端だけである。突然、死者の目と口から炎の雲が吹き出すと、炎をまとった透明な人型が姿を現した。

 

  キャラクターがサイアン・オヴ・マッドネスの30フィート以内に踏み込んだなら、読め:

  黄色い炎をまとった体長10フィートの巨人が、煙と炎を割いて大またに歩みだしてきた。額からは2本の立派な角が突き出し、怪物のような顔に影を落としている。あなたの血を求めるかのように、グレートソードが燃え上がった。

 

サイアン・オヴ・マッドネス Scions of Madness ヒット・ポイント224:脅威度16

エフィジー Effigy ヒット・ポイント202:脅威度17:MMU34ページ

 

戦略

  サイアン・オヴ・マッドネスは敵に気付くとともに即効アクションでステップ・オヴ・ザ・ウインドの構え(移動困難地形を無視し、攻撃ロールに+2ボーナスを得、移動困難地形上にいる敵に対する突き飛ばしと足払いの【筋力】または【敏捷力】判定に+4ボーナスを得る)を取り、さらに可能であるなら武技チャージング・ミノタウロスを起動して敵を突き飛ばし、「火炎流」の中に落とそうとする。そしてサイアンは武技ストーン・ヴァイスを用いて目標の移動を阻害して追加[火]ダメージを与えると、《武器破壊強化》を用いて武器を破壊したり、武技マイティー・スローを用いて「炎をあげる燃え殻」の中に放り込もうとする。サイアンは撤退に入ったPCを攻撃するため、ブレス攻撃を確保しておく。
  エフィジーはPCが10フィート以内に接近したなら、檻の中から抜け出してくる。それは《かすめ飛び攻撃》を用いて接触攻撃を行い、成功したなら犠牲者の体内に《浸食》を試みようとする。もし失敗したなら、それは《浸食》に成功するまで、新たな目標を選択する。いったん《浸食》したならそれはPCを操作し、サイアン・オヴ・マッドネスに挟撃ボーナスを与えたり、またはウィザードやウォーロックといった装甲の薄い敵に対して攻撃を行う。

 

区画の特徴 Features of the Area

  この区域は以下の特徴を持つ。

  傾斜 Slope:この区画は全面が傾斜面であり瓦礫で満たされているため移動困難地形として判断される。そのため〈忍び足〉と〈軽業〉判定の難易度は+2増加する。

  煙 Smoke:この区画は煙で満たされているため、区画内の全クリーチャーに対して視認困難を与える(20%の失敗確率)。加えて、すべての生きているクリーチャーは毎ラウンド頑健セーヴ(難易度15+判定回数)に成功しないなら、息が詰まり咳き込んでラウンドを消費してしまう。2回以上連続したラウンドで窒息したキャラクターは1d6ポイントの非致傷ダメージをこうむる。サイアン・オヴ・マッドネスはこの汚い空気に慣れているため、ここの窒息する状況に完全耐性を持つ。

  炎を上げる燃え殻 Flaming Cinders:「炎を上げる燃え殻」マスは移動困難地形として扱われる。このマスでターンを開始したキャラクターは地上にいるなら6d6ポイントの[火]ダメージを、飛行状態や浮遊状態であるなら2d6ポイントの[火]ダメージをこうむる。

  火炎流 Fire Jet:30フィートの直線、8d6ポイントの[火]ダメージ、反応セーヴ難易度25・半減。このマスに踏み込んだキャラクターは「火炎流」を引き起こす。
  訳註:この攻撃の方位は定まっていない。DMが適切に対処するのが良いだろう。

  檻 Cages:檻は床上10フィートの位置に掛かっており、内部には死亡したクレリック(レベルは10+1d6)が残されている(DMG112ページ参照)。これらクレリックはエルダー・イーヴルの意向に加え、「冒険の背景」に記されている全情報に気付いている。PCがたずねるなら、彼らはその情報を明かすだろう。もし蘇生するか復活させるなら、クレリックは恩知らずかつ非協力的であることが分かる。

  供物 Offering:この区画の奥にはひと振りの冷たい鉄製+3グレートソード が横たえられている。これはかつてコード神に仕える偉大な戦士が佩いていたが、彼は惨殺され、剣も鉱滓として消えようとしていた。