邪悪のエッセンス(The Essence of Evil)

 

…そして終末の日に、千年のまどろみを破りし〈使者〉が現れ、その栄光の光輝により太陽をも覆い隠す。 運命のトランペットが轟然と吹き鳴らされ、その冴え冴えと響き渡る音色は、〈闇の神〉を、永らく不当に捕らえられていた彼を呼び起こす。 恐るべき主に捧げられた三百三十三個の宝石は打ち砕かれ、世界は悲しげな異音を上げて震え上がる。 狭量なる神々に捕らわれし者は、獄より抜け出すと、驚くべき帰還を果たす。 彼はすべての誤りを正す。すべての均衡を復活させ、天地創造により蔓延した異形を正し、原初の状態に帰す。 歓喜せよ、終末が来たのだ…。


  『邪悪のエッセンス』は20レベルPC4〜6人用のD&D冒険である。PCはこのクライマックス・イベントを完遂することにより、21レベル以上に成長する。『邪悪のエッセンス』は長期キャンペーン ‐ 一連の冒険シリーズ ‐ の結末に位置するようにデザインされている。冒険の進行は、DMが自らのキャンペーン設定に適合させるため、概括的に述べられている。また、この冒険は高レベル・ゲームを求めるプレイヤーとDMに、致命的かつ残忍な独立型シナリオとして進行することも出来る。


冒険に必要なもの What You Need to Play

  『邪悪のエッセンス』はD&Dゲームである。あなたはこれをプレイするために『PHB』『DMG』を必要とする。この冒険を進めるにあたり、以下の書籍を参照するが、すべてを必要とするわけではない:『不浄なる暗黒の書』、『秘術大全』、『信仰大全』、『戦士大全』、『Epic Level Handbook』、『Fiend Folio』、『魔物の書T』、『Lords of Madness』、『Magic Item Compendium』、『MM』、『MMV』、『Monster Manual IV』、『Monster Manual V』、『PHBU』、『石の種族』、『呪文大辞典』、『Tome of Battle』。これら書籍からは能力や特技だけではなく、遭遇時の戦術なども参照される。もしあなたが『呪文大辞典』を持っていないなら、あなたは所有するサプリメントから選り抜きの呪文を用意しても良い。


準備 Preparation

  『邪悪のエッセンス』は、事前準備のすべてをDMに任せるという独特な冒険だ。ここには示唆と理念が含まれるが、この冒険をあなたのキャンペーンに適合させる方法はあなたの自由裁量である。例えば、あなたはPCを狂気と邪悪の渦巻くダンジョンの入口まで送り込むこともできるし、「冒険の背景」に記された出来事を進行中のキャンペーンに織り込むことも出来る。あなたがどのように決定するにしてもこの冒険は挑戦となるだろうし、あなたのキャンペーンの最後を飾るエルダー・イーヴルを登場させることになる。
  この冒険は経験豊かなDMのために設計されている。これは困難な試みである。あなたはキャンペーン世界の命運を決定する冒険を、幅広い能力を駆使するモンスターや敵が数多く登場する、致命的な環境で進めることになる。あなたはこれらの諸要素を軽減し、エルダー・イーヴルの性質を変え、世界に対する影響をより少ないものに変更することが出来る。あなたはキャンペーン設定に沿ったクリーチャーを用意し、事前にこれらのモンスターを入れ替えすることも出来る。あなたがこの冒険をどのように進めるとしても、『邪悪のエッセンス』はあなたのプレイヤーに限界を突きつけ、そして彼女らがかつて味わったことのないような技能と能力の試練を与えることは疑いない。


冒険の背景 Adventure Background

  恐るべきタリズダンの御名を恐れるものは少ない。だが〈闇の神〉は多様な名前を持ち、物質界に住まう知性ある種族の精神に深く浸透している。彼は〈受刑者 Patient One〉として知られている。また彼は〈常しえの闇 Eternal Darkness〉としても知られている。他の者は彼を〈長老元素眼 Elder Elemental Eye〉、〈黒檀の神 Ebon God〉と呼ぶ。彼には無数の称号が与えられている。これらはすべて、その本性である悪意と邪悪さを隠すための仮面である。彼を前にして、善悪双方の神々は互いの反目を一時棚上げし、彼を永遠の幽閉状態におくことにした。彼はそれほどまでに強力な破壊の神格であった。彼こそがタリズダン、〈無秩序の王 Lord of Entropy〉にして多次元世界を腐敗・破壊する力そのものである。彼は〈狂気の神 God of Madness〉にして〈終焉の父 Father of Endings〉、そして幾柱かのエルダー・イーヴルの父でもあった。
  神々の懸命なる努力にもかかわらず、この有害なるタリズダンの精神を定命者から遠ざけておくことは出来なかった。彼は夢や想像、熱情を介して、口にするをはばかる秘密を囁きかけた。それを耳にした者は徐々に狂気に踏み込んでいき、その魂は耐え難い渇望をにさらされた。やがて犠牲者は力や富、情欲、復讐心を満たす誘惑に屈していった。彼は下僕たちの前に1つの恐るべき任務を与えた。彼は自由を欲していた ‐ エーテル界の最深部の闇に沈められた牢獄から ‐ 憎悪すべき幽閉状態からの解放を望んでいた。この任務は多くの者に与えられた。しかし誰一人としてそれを達成した者はいなかった。なぜなら〈闇の神〉の敵は数多くあり、彼を解放しようという動きは直ちに打ち砕かれたからであった。それは任務に失敗したタリズダン信徒の、大胆不敵な狂信者の死骸で綴られた歴史だった。彼らはほとんどすべての種族の中から、堕落した主に仕えるべく選ばれた。多くの者は、タリズダンなどは使い古された、容易に蹴散らすことが出来る古い脅威であると考えていた。 その下僕はたびたび出現するものの、しかるべき英雄が現れて打ち砕かれる役割にしか過ぎないと信じていた。今なお、タリズダン配下の無数の軍勢に対して警戒は続けられている。しかし癌が転移するように、自己満足という華はあらゆる警戒者の心に咲いた。それに対して世界は軟弱に過ぎた ‐ あまりにも脆弱だった ‐ 時を経るに従い、抵抗は衰えていった。そして、今その時が来た。
  荒涼とした休火山の奥深くに、〈長老元素眼〉の下僕である恐るべき存在は胎動していた ‐ はるか昔、かの〈常しえの闇〉の断片より、強力な魔法で生み出された存在だ。何世紀にも渡り、この異形は待ち続けた。定命者が狂気の主に捧げる祈祷と生贄を糧に肥え太りながら。この存在は供物に満足できないとき、下僕を二つに分けると互いに争わせ、敗者の魂を供物にした。エルダー・イーヴルは死を捕食することにより、強力な知性を覚醒させ、己が名前と目的を自覚していった。それはショウスラグトとなった。タリズダンの〈使者〉にして恐るべき牢獄を解放する為の鍵だった。
  胎動から覚醒に向かう過程で、それは下僕を弱き者から徐々に抹殺していった。生き残った者は強き者から順に信仰上の階位を与えられていった。狂信者たちは世界中に散り、〈闇の神〉を獄から解放する鍵を捜し求めた。見出された333個の〈タリズダンの宝石〉は〈使者〉のもとに集められ、彼はそれを食して力を蓄えていった。8年の時が流れた。〈使者〉は集められた〈宝石〉を食して肥え太り、急激に成長していた。最後の〈宝石〉が食された時、ショウスラグトはその恐るべき主を探し求める準備ができた。それは隠れ砦から姿を現すと、天に舞い上がり、最後の旅に出発した。


PCが知っていること What the PCs Know

  エルダー・イーヴルのショウスラグトが顕現するとともに、世界中に黙示録の兆候が現れた。そして定命者は目前に迫った運命を警告する印を受け取った。この異変は信仰力を起源とするものであることが判明した。この封印は恐るべき存在を含め、タリズダンとの一切の接触を妨げる封印であった。
  たしかにPCは他のものに比べて確実に早く印を感知することができた。しかし、それよりもショウスラグトの力の高まりは早かった。〈使者〉の出現を示す兆候はシールズ・オヴ・バインディング である。この天を覆う印は召喚術を阻害する効果を持つ。この兆候については下記を参照しろ。『邪悪のエッセンス』開始時、ショウスラグトの兆候は“圧倒的”である。もしあなたがキャンペーンの最終局面としてこの冒険を使うつもりであるなら、事前に様々な兆候を織り込むことを考えろ。
  PCは間違いなく何かが起きていることに気づくため、この印の意味と関連性について研究をするだろう。その過程で、おそらくタリズダンに関する情報を数多く入手することになる。PCの準備にかかわらず、ショウスラグトは(『邪悪寺院、再び』の)〈噴火口尾根鉱山 Crater Ridge Mines〉を引き裂いて出現すると舞い上がり、天空に燃える印に向かって飛翔する。その存在が何であるにしても、それは燃える印に向かう。そしてそれがそこに到達した時、何が起こるかを知っている者はいるだろうか?

シールズ・オヴ・バインディング Seals of Binding:束縛の封印

  シールズ・オヴ・バインディング はほとんどの召喚術呪文と多くの占術呪文に干渉する。それは定命者と次元界のかかわりを阻害し、クレリックは神格との絆が断たれ、クリーチャーは招来が不可能になり、容易な移動手段は発動不能になった。
  兆候の特徴を識別するため、キャラクターは〈知識:宗教〉判定を行うことが出来る。もし判定が5を上回って成功するなら、兆候の強度を識別することが出来る。10を上回って成功するなら、兆候の強度における効果をすべて識別することが出来る。

  微弱(難易度45) :すべての召喚術(招請、招来、瞬間移動)/占術系統の呪文と擬似呪文能力は妨げられる。術者は〈呪文学〉判定(難易度20+呪文レベル)に成功しなくては呪文発動に失敗し、準備した呪文または呪文スロットは失われる。加えて、バニッシュメント ディスミサル のような、対象を現住次元界に押し返す呪文は自動的に失敗する。

  中程度(難易度35) 微弱 と同様であるが、招来クリーチャーはもはや現住次元界に戻ることはない。招来クリーチャーは呪文の持続時間中、術者の制御下にあるが、持続時間が終了すると同時に自由となり、通常の行動を行う。
  信仰術者は術者レベルに−1ペナルティをこうむり、さらに退散/威伏判定とダメージ・ロールに−5ペナルティーをこうむる。

  強力(難易度25) 中程度 と同様であるが、召喚術(瞬間移動)呪文/擬似呪文能力が発動されたなら20%の失敗確率を持つ。発動に失敗した場合、術者と呪文の対象は5d6ポイントのダメージをこうむるる。
  信仰術者は術者レベルに−2ペナルティをこうむり、さらに退散/威伏判定とダメージ・ロールに−10ペナルティーをこうむる。

  圧倒的(難易度15) :すべての召喚術(招請、招来、瞬間移動)呪文は機能しなくなる。他次元界の存在と交感するディヴィネーション などの呪文(コミューン コンタクト・アザー・プレーン など)は失敗する。
  信仰術者は術者レベルに−4ペナルティをこうむり、すべての呪文について20%の呪文失敗確率を持つ。さらに退散/威伏判定とダメージ・ロールに−20ペナルティーをこうむる。


PCが知らないこと What the PCs Don't Know

  〈タリズダンの宝石〉に満腹したエルダー・イーヴルは出発の準備を整えていた。しかしながら、それは天に燃える印により抑制されていた。それが存在する限り、彼は物質界を離れることが出来なかった。そこでエルダー・イーヴルは配下の〈麗し〉のレアスに飲み込んだ〈宝石〉を破壊するように命じた。しかしこのクレリックは〈宝石〉が守護者に守られていること、そして〈宝石〉を破壊するだけの力がないことを恐れていた。そのため、エルダー・イーヴルは部下が命じられたことを成し遂げる勇気を奮い起こすまで空中に足止めされることになったのだ。
  別の問題として、エルダー・イーヴルは成長するにつれてあらゆる種類のフィーンドを引き寄せていた。デーモン、エレメンタル、堕落した異形が崇拝のために現れた。そしてエーテル界に向かう途中、他の者も参集しつつあった。もしエルダー・イーヴルが望むなら、彼は今しばらくの間、食客たちの存在を許すだろう。


冒険の概念 Adventure Synopsis

  兆候として感じられるのは、地下で成長するエルダー・イーヴルの重量による地震である。他の英雄や戦士たちは、ショウスラグトの代行者を抹殺するか投獄する仕事に忙殺されていた。したがって、この破滅的な危機に対処するのはPCの任務となった。エルダー・イーヴルそのものと戦うことは不可能だ。それを外部から破壊するにはあまりにも強大かつ無敵すぎた。その代わり、英雄はエルダー・イーヴルの内部に侵入し、その〈エッセンス〉を探し求め、そしてそれを破壊しなくてはならなかった。
  多くの状況がこの任務を異常なまで難しくしていた。第一は、エルダー・イーヴルのもとに到達すること自体の問題だ。確かに、このレベルのキャラクターであるならオーヴァーランド・フライト 呪文を発動して天空の存在まで移動することができるが、印が天空で燃え続ける限り、召喚術(瞬間移動)呪文は自動的に失敗することを指摘すべきである。キャラクターがエルダー・イーヴルに到達したとしても、彼女らは内部に突入する方法を見いださなくてはならない。
  内部において、PCは燃える印のため〈エッセンス・オヴ・ショウスラグト〉に到達するためのポータルが封ぜられていることと、したがって回廊が封鎖されていることを知る。PCは(第4区画にある)〈タリズダンの宝石〉をすべて破壊することで、印を消し去ることが可能になる。これにより印は消え、PCは第21区画の〈エッセンス〉に対峙するため、第6区画のポータルを使用することが可能になる。不幸なことに、印を弱めることにより、エルダー・イーヴルは物質界を脱出することが出来るようになる。そのため、PCはそれがタリズダンの監獄次元に到達する前に、〈エッセンス〉を破壊しなくてはならない。
  もっと良い解決方法は、トーチ・オヴ・リヴィーイング インセンス・オヴ・ドリーミング を見いだすことである(第18区画にある)。もし冒険者がトーチ に火を灯してポータルに持って来るなら、それが放つ光はポータルを開く。そしてPCはエルダー・イーヴルを解放することなく侵入することができるようになる。


冒険の導入 Adventure Hooks

  PCはこの冒険に多くの方法で関わることが出来る。

突然の到来 Sudden Appearance:エルダー・イーヴルが地震と津波を伴う大爆発を起こし、きのこ雲を上げると大地を引き裂いて姿を現す。この出来事の後、エルダー・イーヴルは天空に舞い上がり、ゆっくりと天空に燃える印に近寄っていく。印は天を覆って燃え、まるで世界を守る魔法の盾であるかのようだ。この天上現象の結果として、魔法が影響をこうむる。呪文は失敗し、様々な効果が世界を混乱に陥れる。PCはこの強力な脅威と戦い、世界をあるべき姿に戻さなくてはならない。

差し迫った破滅 Impending Doom:長きに渡り、預言者と神秘主義者は来たるべき災害を予言していた ‐ 万物の終焉が迫りつつあることを。しかし天空が燃え上がり、魔法が消え去るその時まで、誰一人としてそれを信じる者はいなかった。兆候が強まるにつれ大地は胎動し、ついに暗黒の大怪球が大地を引き裂いて出現した。種々雑多な教会と神殿は〈信仰の危機〉を宣言した。まもなく世界が終焉を迎えることは明白であったからである。PCは他の冒険者集団とともにこの脅威を迎え撃つべく雇われた。真に残念なことに、この大怪球を打ち破る試みは彼女ら最後の英雄団を除きすべて失敗していた。

次元の崩壊 Planar Catastrophe:ショウスラグトは強力な魔法で影界より放逐され、物質界の大地を引き裂いて現れた。果てしない暗黒の空間を破壊の航跡を残して漂流したそれは、PCが属する物質界に出現した。それは恐怖の波動をもたらしつつ現実性を突き破って現れた。ねじくれたシャドウ・クリーチャーの軍勢が拡散するインクのように、大地に広がっていった。人々は軍勢と戦うために集結した。しかしその間にも、エルダー・イーヴルは破壊を撒き散らしつつ天空を荒れ狂った。人々は信じていた。もし誰かがその異形を破壊することができたなら、炎の印は消失し、そして諸神格から暗黒の軍勢と戦うための支援が送られるであろうことを。


暗黒の中心に向かって Into the Heart of Darkness

  不定形をした沸き立つ暗黒の大怪球は、震え、脈動を繰り返しながら天空を漂い、そこから吹き出した堕落は大地を侵していった。〈使者〉の胎内では大量の恐るべきクリーチャーが、奇声を発しながらうかれて乱舞していた。それがゆっくりと天空に舞い上がる時、天空には炎の印が現れて燃え上がった。それは諸神格自身の手により刻まれたものだった。


全般的な特徴 Key Features

  エルダー・イーヴルの内部は、脈動する生きた坑道のネットワークであり、壁からは酸性の分泌液と有害な蒸気が噴出している。内部の大気は腐食臭と腐敗臭に満ちており、全体は移動する者に絡みつく荒い毛で覆われている。それぞれの部屋にはタリズダンの狂気から生まれ出た、ねじれ堕落した新種の恐怖が住み着いている。

天井 Ceilings
各通路と各部屋は、特に記されていない限りその幅と同じだけの高さを持つ。
床 Floors
特に記載されていないなら、この環境におけるすべての空間は、うごめく毛が足に絡みつくことから移動困難地形としてみなす。
壁 Walls
複合体の壁は特に堅固な肉で作られている。10×10フィートの区域毎に120ヒット・ポイント、ダメージ減少20/善および銀、そして高速治癒5を持つ。いずれかの武器により壁に対して攻撃して50ダメージ以上を与えたなら、その区域は突然破裂して30フィートに達する[酸]の円錐を吹き出す。範囲内に位置するすべてのクリーチャーは10d6ポイントの[酸]ダメージをこうむる(反応セーヴ難易度25・半減)。裂け目は凝固し、1ラウンド後には塞がる。
照明 Lighting
内部は全体的に暗い ‐ 持ち込まれた光源すら弱めるほどに。すべての非魔法的光源は闇に飲み込まれてしまい、通常範囲まで薄暗い照明のみを放つ。魔法的光源であるなら、光の届く範囲は半減する。キャラクターが持つ《暗視》は通常に機能する。
音響 Sounds
エルダー・イーヴルの内部は騒音に満ちている:そこは常にきしるような音が響き、遠くからは金切り声が、どこか奥深いところからは轟音が響いてくる。PCがその場所を楽しむことが出来たなら。すべての〈聞き耳〉判定は−5ペナルティーをこうむる。


防御体制 Defenses

  エルダー・イーヴルの内部にはクリーチャーがはびこっている ‐ それら恐るべきクリーチャーは、〈闇の神〉の好意を得るために物質界までやってきたのだった。PCは壁を含むようにダメージ呪文を発動しない限り徘徊モンスターに出会う危険性はない。もしそのような状況が起きたなら、壁が盛り上がって黒い腫脹性の腫瘍が浮き出てくる。1d3ラウンド後に腫瘍は破裂し、半径20フィート内に位置するすべてのクリーチャーに対して5d6ポイントの[酸]ダメージを与える(反応セーヴ難易度20・半減)。猛悪な体液に続き、ショウスラグトの邪悪な下僕であるブラック・シストが現れる。この新たに生み出された異形は、その擬似視覚範囲内(120フィート)にクリーチャーがいる限り、毎ラウンド至近のクリーチャーに対して攻撃を行う。ブラック・シストはいったん生み出されたなら、破壊されるまで居座り続ける。

ブラック・シスト Black Cyst ヒット・ポイント346:脅威度18


この冒険の運用方法 Using this Adventure

  この冒険に登場するエルダー・イーヴルはグレイホーク世界設定の主たる脅威であるタリズダンと密接に関連している。しかしあなたはこのシナリオを容易に他の世界設定に適合させることが出来る。

  フォーゴトン・レルム Forgotten Realms:フォーゴトン・レルム設定において、ショウスラグトはゴーナドーの〈使者〉である。〈太古の瞳〉は宿敵に戦いを挑む際に諸神の注意をそらす囮として〈使者〉を生み出した。〈使者〉には敵対する諸神に仕える定命の信者を一掃する目的が与えられていた。彼は敵を倒してパワーを奪い取り、それを用いてエイオーを滅ぼし、多次元世界と創造の秘密を奪い取ろうとしていた。PCはゴーナドー自身が動き始める前に〈使者〉を止めなくてはならない。

  エベロン Eberron:強力だがほとんど忘れられたデルキールの将軍によりショウスラグトは作り出され、そして主の呼び出しを待ち続けていた。堕落した悪の下僕がカイバーの中に降り立つと、彼らはショウスラグトの安息所を暴き出し、そして異形を目覚めさせた。大地を裂いて出現したエルダー・イーヴルは現実性をも引き裂き、定命者の次元界に“狂気の領域”を現出させようとしていた。

  ドラゴンランス Dragonlance:〈魂の戦争〉により覚醒させられた〈使者〉は、内部の神秘的な空間に混沌の断片を満載しつつ、創造者を求めて物質界を脱するべく大地を吹き上げて現れた。

  レイヴン・ロフト Demiplane of Dread:物質界を脱したショウスラグトはすべてを破壊しつつ突進していた。それがエーテル界を通り抜けている途中、〈恐怖の擬似次元〉の霧がそれを捕らえ、すべての邪悪が渦巻く恐怖の次元界に引き寄せられていった。ショウスラグトの出現に歓喜した領域の貴族たちは、互いにそれを取り込もうとして戦争を始めた。

  ミスタラ Mystara:外方次元界の連合により生み出されたショウスラグトは、雨のように死と破壊をもたらす〈夢魔の次元〉を通り抜けてこの世界に出現した。それが地面をかすめ飛ぶにつれ大地には無数の異形が湧き出し、混沌と無秩序という説明不能な力を持つ病んだ精神は世界中に被造物を撒き散らしつつあった。

  ダーク・サン Dark Sun:それは〈死者の国〉の破壊の雨の中、力を持った知性の断片から生まれたと信じられていた。ショウスラグトは天空を横切るよりも、漆黒の触手をもって大地を這い進むことを好んだ。こぼれたインクのシミのようにそれは広がり続け、エイサスに残るわずかな生命はいま危険にさらされていた。大胆不適な英雄たちはすべてが間に合わなくなる前にエルダー・イーヴルを止めなくてはならない。

  バースライト Birthright:コールド・ライダーはかつての力と権勢、〈闇の神〉エイズレイの権威を取り戻そうともくろみ、ショウスラグトを覚醒させた。エルダー・イーヴルはイーヴァンシーンとシャドウ・ワールドに結びついた物質界の天空に穴を穿って漂った。そしてコールド・ライダーは恐るべき事件の到来を予期して獣の下僕を率いて戦いの準備を始め、世界を戦争に引きずり込んで灰燼に帰そうとしていた。


遭遇区画 Encounter Areas

  以下の場所説明は、ダンジョン・マップ上に示されたそれぞれに対応している。


1.膿汁を流す開口部

2.狂気の嚢胞

3.涙を流す部屋

4.溶けた氷の池

5.大虐殺

6.暗褐色のポータル

7.落とし穴と柱

8.溜息の回廊

9.〈闇の神〉の獄舎

10.控えの間

11.悪臭を放つ集団

12.歓喜の間

13.挑戦状

14.デーモンの見張り

15.肉の部屋

16.水膨れ

17.《眼》の守り手

18.特使

19.影の寺院

20.タリズダンの聖堂騎士

21.〈エッセンス・オヴ・ショウスラグト〉


冒険の終了 Concluding the Adventure

  この冒険の理想的な結果は、PCがエルダー・イーヴルの体内に巣食う危険を突破し、ポータルをくぐり抜ける方法を見いだし、〈エッセンス〉を見つけ出して破ることである。その破壊とともにエルダー・イーヴルは滅び、急速に朽ち果てる。PCは自身の世界の上空数百フィートの空間に放り出されるか、エーテル界で立ち往生させられるだろう。選択肢の1つとして、PCはエルダー・イーヴルとともに牢獄次元に到達し、そしてタリズダンの恐るべき領地を見いだして正気を破壊される最初の定命者となるかもしれない。
  失敗の結果、タリズダンが解放されたなら、万物の終焉が訪れることは既に示唆されている。もしPCがトーチ を使ってエルダー・イーヴルに挑んで敗退し、かつレアスが生きているなら、最終的に彼は〈タリズダンの宝石〉を破壊し、そしてエルダー・イーヴルは物質界を離脱して最後の旅に乗り出すだろう。このような最悪の終末に際して、ようやく諸神格は異形に注目する。不幸にも、エルダー・イーヴルの邪悪な性質は、配下を互いに争わせ、正気を失わせる。その事実はあなたのキャンペーンに大きな影響を与えるだろう。ショウスラグトが彼の主のもとにたどり着くか否か、その結果はDMに託されている。しかしこのような出来事はあなたの世界を作り直し、まったく新しい世界に切り替える機会を与える。あなたがどのような決断するとしても、ショウスラグトの覚醒と破壊はあなたの世界設定を全面的に変更できる特異な出来事であり、このようなモンスターと戦うスリル満点の冒険となるだろう。


The Essence of Evil CREDITS
Design:Robert J. Schwalb
Editing:Miranda Horner
Cartography:Mike Schley
Interior Art:Francis Tsai, Mark Sasso
Design Manager:Christopher Perkins
Managing Editor:Kim Mohan
Art Director:Stacy Longstreet
Director of RPG R&D:Bill Slavicsek
Web Production:Chris Thomasson
Web Development:Mark A. Jindra