ここの空気は冷たい。あまりに冷たいため、吐く息は白くなり、肌は刺すように痛む。ここは巨大な鍾乳洞であり、洞窟は全方位に広がっている。洞窟内には、巨大な鍾乳石や石筍などが、いたるところにある。大洞窟のはずれに、1箇所だけ、かすかな光を放つ場所がある。くぼみの中に、巨大な骨が積み重ねられた、小山がひとつある:強大な、ドラゴンの骨の山だ。 |
英雄たちが今できる最良の選択は、反転して全力で逃げ出すことだ。しかし、もちろんそれは遠路はるばるやってきた英雄の行いとは言い難いし、タルダラスが生き残っているのであれば、一行の前進を急き立てる可能性は高い。部屋に入り、骨のドラゴンのイラストから25フィート以内に近づいたPCは、光源を簡単に発見することができる。光源はドラゴンの骨から10フィートのところにある。
光源 The Light
光は、やせ衰えたノームがかぶる、黄金の王冠からさしている。彼はなかば、鍾乳石に覆われており、まるで何百年もこの場所にとどまっていたかのようだ。 |
実際の出来事 The Real Story :ノームはケルシャー Kalsha と呼ばれるケラプティスの下僕であり、悪しきウィザードが〈ドラゴサの心臓〉を盗んだとき、この場に残された。ケルシャーはクラウン・オヴ・モータリティ を身につけている。これはドラゴンが持つアンデッドの心臓を利用する、ケラプティスが作り出した装置だ。生きたクリーチャーがクラウン を身につける限り、黄金の光線が照射され、アンデッド・ドラゴンは不活性化して横たわり続ける。
不幸なことに、ドラゴサの力は強大であり、クラウン・オヴ・モータリティ の影響下にあっても“活動”を続けることができた。もし、ドラゴサの残骸が眠るくぼみの縁から20フィート以内に生きたクリーチャーが接近するなら、アンデッド・ドラゴンは生命体から生命力を吸収し始める。これはドラゴサの復活をとどめようとするクラウン・オヴ・モータリティ の効果を無力化してしまう。もし英雄がクラウン をかぶったノームかドラゴサの残骸に近づくなら、光は消える。
光源消失後 The Light Goes Out
めまいに似た、暗黒の気配が忍び寄る。背筋を悪寒が走る。心臓が、冷たい手につかまれたかのようだ。あなたの吐息を感じたかのように、王冠の放つ金色の光はゆらめき、そして消えてしまう。ノームの体は崩れ落ち、薄れる光の中でチリとなる。しかし、幽霊のものと思われる声が聞こえてくる: 「我の番は終わった。貴公の心臓は、いまや不死のドラゴンに力を与えつつある。貴公らのひとりが、我に代わり番を務めねばならぬ。クラウン・オヴ・モータリティ を持て。そしてドラゴサが、再び世界を汚さぬようにかぶれ。他の者は、この不浄の地より去れ。」 |
次の展開 What Happens Next :ケルシャーの亡霊は冥界に向かって出発する。クラウン の光は消えるが、くぼみからは病気がかった黄色い炎が噴き出し、ドラゴサのものと思われる骨が輝き始める。PCが何も手を出さないのなら、崩れ去るノームの残骸からクラウン は転げ落ち、活性化しつつある骨の間に転がっていく。
今や、ドラゴサの残骸は活性化しつつある。くぼみから20フィート以内にいる生きているクリーチャーは意志セーヴ難易度18を行わなくてはならない。失敗したPCは心臓に、今後二度と忘れることができない重みを感じる。この重みはドラゴサが掛け渡す死霊術リンクが原因だ。リンクはドラゴサを活性化させ、アンデッド・ドラゴンは毎ラウンド5ポイントずつ再生を開始する。英雄たちは死ぬわけではないが、クラウン・オヴ・モータリティ により不浄のリンクが切断されるまで、毎ラウンド5ポイントのヒット・ポイントを失う。このリンクはブレイク・エンチャントメント かリミテッド・ウィッシュ、ウィッシュ、ミラクル といった強力な呪文を発動しない限り破壊することができない。幸運なことは、ドラゴサは物理的に、彼自身を縛るクラウン に触れることができない。クラウン を身につけるということは、着用者はくぼみに入ってクラウン をかぶり、ドラゴンを不活性化させるための人身御供となることを意味する。
クラウン がくぼみに転がり落ちて1ラウンド後、骨は病的な光を放つ炎を上げ始め、ドラゴサは復活する。
ドラゴサの目覚め Dragotha Rising
静寂は破られ、狩りの咆哮がとどろく。あなたは、耳をつんざくような絶叫に震える。恐るべき骨格が起き上がると、蛇のようにかま首を振り上げ、狂ったように天井まで持ち上がる。それはゆうに100フィートを超えているようだ。洞窟のような眼窩は、夜闇のように暗く、黄色い光がすべての骨から放たれる。アンデッド・ドラゴンの口の中は、人間の背丈より高い歯が並び、それは人ひとりをそっくり飲み込めそうだ。 |
今、なにをすべきか? Now What ? :ドラゴンは恐るべき脅威である。一行が取り得る最良の手段は、1人がクラウン・オヴ・モータリティ を探しだしてかぶり、残りの者がドラゴンの注意を引き付けることだ。クラウン に触れたキャラクターは、このアクションが取り消せないことを悟る。そのため、クラウン をかぶるという事は、真の英雄だけが持つ胆力を必要とする。クラウン をかぶったなら、アンデッド・ドラゴンの死霊術リンクは即座に切断される。もしタルダラスがその重要性を説いたにもかかわらず、英雄がクラウン をかぶろうとしないなら、タルダラスは自らを犠牲にしようとする。もしクラウン をかぶったなら、ドラゴサの骨は不活性化し、再び地面に転がる。生き残ったものが10ラウンド以内にここを立ち去る限り、新たな死霊術リンクは掛け渡されない。
ドラゴサは簡単に倒せる相手ではない。もし彼が実際に生きたPCを抹殺したなら、アンデッド・ドラゴンは心臓を喰らおうとする。そして一時的ながら(24時間)、死霊術リンクがなくても活動することができるようになる。そのため、彼は恐ろしいブレス攻撃を含む攻撃を全力で行い、可能な限り1体の敵を抹殺しようとする。
また、英雄たちがいずれかのクリーチャーを招来し、クラウン をかぶるように説得することは可能だ。しかしながら、クラウン の効果は招来クリーチャーの本体にすら影響を及ぼすため(招来クリーチャーの本体は招来呪文の持続時間が終了すると共に死亡する。その事実にクリーチャーは即座に気付く)、善属性でないクリーチャーはその命令を拒否する。また、善属性のクリーチャーを招来することは、アンハロウ 影響下であることから困難であることに注意しろ。
もしアンデッド・ドラゴンがクラウン をかぶった英雄により不活性化されるなら、くぼみをすばやく〈捜索〉することで(難易度25)、活性化していたドラゴンが集めていた宝物を発見することができる。それぞれのPCがくぼみに下りるには1ラウンドを要し、またアイテムひとつを取り出すのにも1ラウンドを要する。この部屋で10ラウンドを過ごすことより、ドラゴサの再復活の可能性は高まる ‐ 10ラウンドを経過することにより、骨は再び光りはじめ、クラウン をかぶったものは死霊術リンクが再構成されつつあることを警告するだろう。
ドラゴサの宝物には32粒のさまざまな種類の宝石(それぞれ150gp相当);後ろ足で立ち上がるドラゴンを彫ったルビー(5000gp相当);燃え上がる炎を閉じ込めたように見えるダイアモンド(2000gp相当)が含まれる。中には7433枚の希少なコイン(収集家なら52000gpを払い、街頭なら6303gpで捌ける)も含まれる。宝物の中には若干の魔法のアイテムも含まれる。それらはハット・オヴ・ディスガイズ (現時点の見た目はトルコ帽)、パール・オヴ・パワー (2レベル呪文)、デカンター・オヴ・エンドレス・ウォーター、ダスト・オヴ・トレイスレスネス (13回分)、ガントレッツ・オヴ・スイミング・アンド・クライミング、ヒューワーズ・ハンディ・ハヴァサック、きらめく青の球形アイウーン・ストーン、脈動する紫色の三角柱アイウーン・ストーン、緋色と青の球形アイウーン・ストーン、桃色と緑色の球形アイウーン・ストーン である。
ドラゴサ Dragotha :ヒット・ポイント78
訳註:表記されているドラゴサのヒット・ポイントは最大値である。第1ラウンドにおいて、ドラゴサのヒット・ポイントは5でしかないことに注意しろ。
スケルトン Skeletons: ヒット・ポイント6;MM106ページ